数次相続

 「数次相続」とは、一つの相続開始後、相続手続き(遺産分割)を終える前に、次の相続開始があるような場合をいいます。 例えば、祖父の死亡後、その遺産分割協議を終えることなく、その相続人である父親が死亡するというような場合です。 相続は一定の時間経過とともに次々に発生するものなので、その都度遺産分割をしておかないと、権利関係が複雑になり、会ったこともない親族と遺産分割協議をすることになります。

2次相続

2次相続 左図は、簡単な数次相続の例です。 子がいない本人の死亡により開始された相続(1次相続)について、法定相続人である妻(配偶者)と母(直系尊属)が遺産分割協議をしていたところ、母が死亡してしまい2次相続が発生した例です。 母の死亡により、母が相続するはずであった遺産は、母の子(兄、妹)が相続することになりますので、1次相続について、妻(配偶者)と兄、妹の3人で遺産分割をすることになります。 1次相続の法定相続分は、妻(配偶者)が4/6、母(直系尊属)は2/6なので、兄と妹は母の相続分をそれぞれ1/6相続します。 このとき同時に、又は後で、母固有の遺産について兄と妹は2次相続の遺産分割をすることになります。

3次相続

 下の図はちょっと複雑ですが、3次相続の説明図です。
祖父は平成1年に亡くなり(1次相続開始)ましたが、まだ遺産分割はしていません。 父が平成20年に亡くなり(2次相続開始)、これについても遺産分割はされていません。 本年、本人が死亡し(3次相続開始)遺産分割協議をする場合の例です。なお、遺言書はいずれの相続についても無いことを前提としています。
各相続について、その都度遺産分割をする場合は以下のようになります。
1次相続・・・祖父死亡の相続開始による法定相続人と法定相続分は、配偶者である祖母4/8、子である伯父、父、叔母、前婚の子の伯母はそれぞれ1/8となります。
2次相続・・・父死亡の相続開始による法定相続人と法定相続分は、配偶者である母3/6、子である兄、本人、弟はそれぞれ1/6を相続します。
3次相続・・・本人死亡の相続開始による法定相続人と法定相続分は、配偶者である夫3/6、前婚の子A、後婚の子B、子Cはそれぞれ1/6となります。

3次相続

ところが、その都度遺産分割をしなかったことにより祖父の死亡についての遺産分割協議の当事者は、祖母、伯母、伯父、母、叔母、兄、弟、夫、子A、子B、子Cの11名となります。 何故なら、祖父死亡により祖父の遺産について、父に相続が発生しますが、父は既に死亡しているので、父が祖父から受け継ぐ遺産は母と兄、本人、弟に及びます。 次に本人が死亡したので、祖父→父→本人へと受け継ぐ遺産は、本人の夫や子A、子B、子Cに及びます。 つまり祖父の遺産は、これらの人たちすべてに及び、遺産分割協議は11名の合意がなければ分割できないことになります。 祖父の遺産でない父自身の固有の財産についての相続人は、母、兄、本人、弟ですが、本人の死亡により、本人が父から受ける遺産について、夫や子A・B・Cに及び、父の遺産分割についてはこれらの人も関わってきます。
祖父の死亡による法定相続人と法定相続分は、祖母は144/288、伯母・伯父・叔母は各36/288、母は18/288、兄、弟は各6/288、夫は3/288、子A、子B、子Cは各1/288となります。

このようにその都度遺産分割をしておかないと、今まで会ったこともない親族と遺産分割協議をすることになり、話し合いができなかったり、まとまらないことがあります。 また、この相続人達の中に、未成年者や認知症の高齢者がいる場合は、家庭裁判所へ後見人選任を申し立てる必要があることから、さらに時間と費用がかかります。

同じ事故で2人が亡くなった場合の相続

 飛行機事故や自動車事故で、相互に相続人である2人の人が同時に亡くなった場合には、どちらが先に亡くなったかにより相続人が異なります。

同時死亡の相続1左図は、父と次男が同じ事故で亡くなった例で、父が先に亡くなった場合の相続関係図です。父が先に亡くなったので、まず父について相続が開始されます。 父の法定相続人と法定相続分は、母12/24、長男、次男、長女がそれぞれ4/24を相続します。 次に次男が亡くなったので、父からの次男の相続分は、妻が2/4、子A、子Bがそれぞれ1/4で分けることになりますので、父の遺産の相続分は、妻が2/24、子A、子Bはそれぞれ1/24となります。 次男自身の遺産については、妻2/4、子A、子Bがそれぞれ1/4を相続します。

同時死亡の相続2右図は、次男が先に亡くなった場合と父と次男が全く同時に亡くなった場合の相続関係図です。
次男が先に亡くなった場合の父の遺産についての法定相続人と法定相続分は、母6/12、長男、次男、長女はそれぞれ2/12を相続しますが、次男は既に死亡しているので代襲相続が発生し、次男の子A、子Bがそれぞれ1/12を相続します。 次男自身の遺産については、妻2/4、子A、子Bがそれぞれ1/4を相続します。
父と次男が全く同時に亡くなった、又はどちらが先に死亡したか分からない場合、父と次男の間には互いに相続は発生しません。 なので父の遺産の法定相続人は、母、長男、長女となります。 しかし、次男に子がある場合には、代襲相続は発生しますので、上記の次男が先に亡くなった場合と同様の結果となります。

同時死亡の相続3左図は父と子(子がいない)が同じ事故で亡くなった例です。
母は既に死亡し、父が先に亡くなっているので、父の遺産はすべて子が相続します。 次に子(本人)が亡くなっているので、子が相続した父の遺産は、全て妻(配偶者)が相続します。

同時死亡の相続4右図は、子が先に亡くなった相続関係図です。 子が先に亡くなっているので、子の相続人は、妻(配偶者)と父(直系尊属)ですが、次に父が亡くなっているので、父が相続する子の遺産は、伯父、叔母が相続することになります。 よって、子の遺産について法定相続分は、妻(配偶者)6/8、伯父、叔母はそれぞれ1/8となります。 もし、子(本人)に子があれば、代襲相続しますので、父の遺産は子(本人)の子(父から見れば孫)が相続し、伯父、叔母は相続しません。

同時死亡の相続5左図は、父と子が同時に死亡した、又はどちらが先に死亡したか分からない場合です。 この場合は、父と子の間は相互に相続はありませんので、子の遺産については、妻(配偶者)が全てを相続し、父の遺産については、伯父、叔母が相続することになります。 もし、子(本人)に子があれば、代襲相続しますので、父の遺産は子(本人)の子(父から見れば孫)が相続します。

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