法務大臣への帰化許可による日本国籍取得
(国籍法 第5条~第9条)

 帰化許可申請~帰化の許可・不許可の結果が判明するまでは1年程度の時間を要し、帰化の許可をするかどうかは法務大臣の自由な裁量に任されています。

「永住」と「帰化」の違い

【「永住は外国人」、「帰化は日本人」】
在留資格の「永住」と「帰化」の違いは、「永住は外国人」「帰化は日本人」となることにあります。 「永住」の場合は、その立場は外国人なので、他の在留資格同様、「永住者」の在留資格を持ち、退去強制の対象となり、出国する場合も再入国手続が必要となりますが、帰化により日本人となれば、当然に退去強制の対象とならず、出国する場合も再入国の手続も必要なくなり、参政権が得られます。

【「永住」は入管法、「帰化」は国籍法】
「永住」は入管法が根拠法ですから申請は入国管理局、「帰化」は国籍法が根拠法で法務局へ申請します。 許可・不許可するのはどちらも法務大臣です。

【帰化は申請者本人の出頭が必須】・・・「永住」は行政書士が申請取次ぎできますが、「帰化」は申請者本人が出頭しなければなりません。 帰化申請については様々な書類を用意しなければならないので、行政書士はその申請書類の作成を受任します。

帰化許可の種類

 帰化許可の条件には、住所・能力・素行・生計・重国籍防止・憲法遵守条件がありますが、日本への帰化を希望する外国人により3種類の帰化に分けられます。
普通帰化・・・一般の外国人について帰化を認めるもの
簡易帰化・・・日本との地縁や血縁関係に着目して、住居・能力・生計条件を緩和して帰化を認めるもの
大帰化・・・日本に特別の功労があった外国人について、帰化条件を問わず国会の承認により帰化を認めるもので、これまでに事例はないようです。

普通帰化の許可条件(国籍法 第5条)

 一般の外国人が帰化する場合の条件です。 この条件を備える外国人でなければ、帰化を許可することができないとされています。 日本人との地縁や血縁関係のある者は、一部の条件を備えていなくても帰化することができるとされています。→ 参照:帰化条件の緩和(簡易帰化)

1.住所条件・・・引き続き5年以上日本に住所を有すること。
「引き続き5年以上」・・・帰化申請時の要件で、帰化許可されるまで日本に住所を有していなければなりません。 「引き続き」とは、継続性を要求しているので、再入国許可を受けて出国している期間は、日本での在留が継続していることになりますが、そうでない場合は在留が継続していることになりません。 
「住所を有すること」・・・「適法に住所を有すること」という意味で、適法に在留資格をもち、日本に「生活の本拠(生活関係の中心のある場所)」があることを意味し、単に居所ではありません。 よって「生活の本拠」が日本にあっても、不法入国・不法残留などで不法に滞在している場合は該当せず、住所があった期間は在留資格の取得時から起算されるのが原則です。
なお、この住所条件は、日本との地縁や血縁関係によって条件を緩和されます。→ 参照:帰化条件の緩和(簡易帰化)

2.能力条件・・・20歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
「本国法によって行為能力を有する」とは、帰化しようとする外国人の本国の法律で、成人年齢が満21歳であった場合、20歳の人は本国では未成年である為、行為能力を有しないこととなり、20歳以上であっても能力条件に該当しないことになります。 逆に、本国の法律で成人年齢が18歳の場合、19歳の人は行為能力を有していると扱われますが、「20歳以上で」という条件があるので19歳の者はこの条件を満たさないことになります。 なお、未成年でも婚姻すると成人とみなされる成年擬制されている者でも、この条件は免除されません。
なお、この能力条件は、日本との地縁や血縁関係によって条件を緩和されます。→ 参照:帰化条件の緩和(簡易帰化)

3.素行条件・・・素行が善良であること。
・前科や非行歴の有無、道路交通法違反、風俗営業法違反などが判断材料となります。
・納税義務は国民の基本的義務の1つなので、適切な所得税申告や納税が必要です。
一度でも前科や非行歴があると絶対に許可されないかといえばそうではありませんが、犯罪からの一定年数の経過やその後の反省や法令遵守の姿勢、生活態度、再犯の恐れのないことなどにより許可される場合もあります。

4.生計条件・・・自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能に
よつて生計を営むことができること。

・生計を一にする親族単位に判断され、自力で生計を営むことができなくても、生計を一にする配偶者その他親族により生計を立てることができればよい。 学生などは別居していても仕送りを受けて生活していればよい。
なお、この生計条件は、日本との地縁や血縁関係によって条件を緩和されます。→ 参照:帰化条件の緩和(簡易帰化)

5.重国籍防止条件・・・国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつて
その国籍を失うべきこと。

多くの国では外国の国籍を取得すると、自動的にその国の国籍を喪失することになっていますが、帰化前にその国の国籍を離脱することができない国や国籍喪失を認めていない国、また、国籍離脱の手続をとれない難民などの場合は、日本国民との親族関係や難民など人道上の配慮が必要など特別の事情があれば、帰化を許可されることがあります。

6.憲法遵守条件・・・暴力的な反政府活動等に関係していないこと
日本国憲法施行下において、日本国憲法や政府を暴力で破壊することを企てたり、主張したり、又は企てたり、主張する政党その他の団体を結成したり、加入したことがないこと。

(7.日本語能力条件・・・ある程度の日本語力があること)
国籍法に規定されていないので( )書きにしていますが、当然に日本語の読み書き、理解、会話能力が必要となります。 基準はありませんが、選挙権等が行使できるようになるので、小学校3年生以上の日本語能力が求められます。

帰化許可条件の緩和(簡易帰化)

日本国民との血縁や地縁関係を有する者は、上記帰化許可の条件は次のように緩和されています。

■1住所条件の緩和(国籍法 第6条)

以下に該当する者は、住所条件を備えないときでも帰化を許可することができるとされています。 この規定は、生地主義的な要素を元に帰化条件を緩和したものです。
① 日本国民であつた者の子(普通用紙・特別養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所・居所を有する者
「日本国民であった者」・・・かつては日本国籍であったが、後に日本国籍を離脱した者で現在は日本国籍でない者

② 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所・居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く)が日本で生まれたもの

③ 引き続き10年以上日本に居所を有する者

■1住所条件、2能力条件の緩和(国籍法 第7条)

以下に該当する者は、住所条件、能力条件を備えないときでも帰化を許可することができるとされています。 日本人配偶者が既に亡くなっている場合には該当しません。
① 日本国民の配偶者で引き続き3年以上日本に住所・居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの (住居・居所の期間は問われるが婚姻期間は問われない)

② 日本国民の配偶者で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するもの(①とは逆に婚姻期間が問われ、住所条件は1年以上となる)

■1住所条件、2能力条件、4生計条件の緩和(国籍法 第8条)

以下に該当する者は、住所条件、能力条件、生計条件を備えないときでも帰化を許可することができるとされています。
① 日本国民の子(普通養子・特別養子を除く)で日本に住所を有するもの
日本人の子は出生により日本国籍を取得するので、この規定に該当する人は、子の出生時、外国人である父母が、後に父母どちらかが日本国籍を取得した場合です。 父母死亡の場合は、死亡時日本人であればよい。 父母と子が同時に申請した場合、父母が許可になれば、子についても許可される。

② 日本国民の養子(普通養子・特別養子)で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの なお、日本国民の養子は、養子縁組後に養親が日本国籍を取得した場合も含みます。

③ 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く)で日本に住所を有するもの

④ 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの
日本で生まれても、父母が外国人又は一方が外国人のときは、父母の国の法制度によりその子は国籍を取得しない場合があることに対応した規定で、生地主義的な規定です。

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