尊厳死宣言書

 現代は医学の進歩がめざましく延命治療により死期を延ばすことが可能です。 「1日でも長くいきたい」「延命治療を望まず自然な死を迎えたい」「家族に負担を強いる過剰な末期治療はして欲しくない」 人により考え方は様々だと思います。 しかし、実際にそのような状態となったときには、本人にはその意思を表示することができませんし、もし家族が本人の意思を知っていたとしても、その判断に迷うだろうし、そのことを証明することができません。 当然、医師は法的責任を回避しようと延命治療を施すことになります。 このような状態になったとき、いかに死を迎えるかを元気なときに表明しておくのが「尊厳死宣言書」です。

尊厳死とは

「尊厳死」とは
人が人として尊厳を保って死に臨むことで、事故や病気などにより脳死状態や植物状態となり、回復する見込みがない末期状態になった患者に対して、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない生命維持治療をしない又は中止して、人としての尊厳を保ちながら死を迎えることを云います。 尊厳死を望んでいても、実際にそういった状況となった場合には、既に本人は意思表示できない状態にある為、予め書面で表明しておく必要があります。
※ 尊厳死については「生存権」を侵す可能性があるという立場から、尊厳死を望む根底には「生産性のある人間のみが生きるに値する」という価値観があると批判があります。
「安楽死」とは
助かる見込みがないのに、耐え難い苦痛から逃れることもできない患者の自発的要請に応えて、医師の積極的な医療行為で患者を早く死なせること。

尊厳死が認められる条件

 尊厳死が認められるには、死期が迫っており人工呼吸器などの延命措置を施して死期を延ばすことはできても、医学的に治癒する見込みがないという場合です。 従いまして、脳死状態は尊厳死が認められますが、脳の一部の機能が残っているような植物状態の場合には、将来回復する可能性があることから見解が分かれています。 日本尊厳死協会では植物状態が数ヶ月以上続いた場合には生命維持装置を取りやめるという尊厳死宣言書のひな形がありますが、公証役場で公正証書として作成する宣言書は、植物状態を含んでいません。

尊厳死宣言書の作成方法

 尊厳死宣言書の作成は公正証書(事実実験公正証書)でする方法と私署証書の認証で行います。 遺言書のような証人は不要です。

【公正証書でする方法】
公証人に文案を作成してもらい、予約日に公証役場で公正証書を作成する方法です。
【私署証書の認証でする方法】
自分で作成した宣言書を公証役場に持参して、証書の署名・押印について公証人の認証を受けてその証明力を補強しようとするものです。 公証人は宣言書の内容については確認しないので、行政書士に相談されると不備のない宣言書が作成できます。

尊厳死宣言書の内容

 宣言書の内容は、以下のような概要となります。

尊 厳 死 宣 言 書

私 岩田和久は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、且つ死期が迫っていると診断された場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の医療に携わっている方々に次の通り尊厳死について希望し、ここに宣言致します。

第1条 私の疾病が、現代の医学では不治の状態であり、既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、いたずらに死期を引き延ばすための延命措置は一切拒否いたします。 但しこの場合において、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施していただき、そのため、たとえば、麻薬などの副作用で死期が早まったとしても、一向にかまいません。

第2条 私がいわゆる植物状態に陥り3ケ月を超えた場合は、一切の生命維持装置を取りやめて下さい。

第3条 私の宣言による要望を忠実に果たしてくださった方々に深く感謝申し上げます。 そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は私自身にあります。 警察、検察関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動をとったことにより、これらの方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。

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