上陸特別許可 (入管法 第12条 法務大臣の裁決の特例)

上陸特別許可 上陸拒否事由に該当するときは、日本からの退去を命じられますが、法務大臣は、上陸拒否事由に該当している場合でも、上陸を特別に許可することができるとされています。

外国人が日本に上陸するには、上陸拒否事由に該当していないことが要件となっています。 上陸をしようとした(上陸許可申請をした)外国人が、上陸拒否事由に該当するときは、日本からの退去を命じられますが、法務大臣は、他の上陸許可の要件を満たし、上陸拒否事由に該当している場合でも、上陸を特別に許可することができるとされています。
なお、「上陸特別許可」とされていますが、この許可は法務大臣の裁決の特例として規定されており、法務大臣の自由裁量に基づく特例措置なので、申請に基づくものではありません。

上陸許可の要件
① 有効な旅券(パスポート)を所持していること
② 査証(ビザ)が必要な場合は、上陸目的に適合する有効な査証を受けていること
③ 上陸目的に虚偽がなく、入管法の在留資格該当性、上陸許可基準を満たすこと
④ 在留期間が法務省令の規定に適合するものであること
⑤ 上陸拒否事由に該当しないこと
⑥ 上陸申請時に指紋・写真等の個人識別情報を提供すること

上陸拒否事由

 上陸を許可されるには、以下の表の上陸拒否事由のいずれにも該当していないことが要件のひとつとなっています。 上陸拒否事由に該当する場合には、原則として上陸は許可されず、退去命令により帰国する事になります。

再入国する場合にも上陸拒否事由の該当性を審査されます。・・・上陸拒否事由は上陸しようとする外国人についての規定ですが、既に日本に在留している外国人が、一旦出国して再入国する場合にも上陸拒否事由非該当性の要件を満たさなければなりません。

上 陸 拒 否 事 由
感染疾患症患者 エボラ出血熱、鳥インフルエンザなどの感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一定の感染症疾患者又は新感染症所見ある者
被後見人、被保佐人 精神障害者で法務省令で定める補助者を伴わない者
貧困者、放浪者等 生活上、国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者
1年以上の懲役・禁錮等刑に処せられたことのある者 日本又は日本以外の国の法令に違反し、刑の確定があれば該当し、執行猶予期間中・執行猶予経過した者、刑の言い渡し効力が消滅した者を含みます。(政治犯除く) 
麻薬取締法等違反者 日本又は日本以外の国の麻薬・大麻・アヘン・覚醒剤・向精神薬等取締に関する法令に違反して刑に処せられたことのある者(4同様、刑の確定があれば該当する。)
5-2 国際競技会等関連不法行為 国際競技会等経過・結果に関連又は妨害目的で、殺傷・暴行・脅迫・建造物破壊をして、日本又は日本以外の国の法令に違反して刑に処せられ又は退去強制させられた者で再発の恐れがある者
麻薬等不法所持者 麻薬・大麻・アヘン・覚醒剤やその原料又はその吸食器具を不法に所持する者
売春業務従事者 売春又はその周旋・勧誘・その場所提供その他売春に直接関係がある業務に従事したことのある者(人身取引等により他人の支配下に置かれていた者が当該業務に従事した場合を除く)
7-2 人身取引・教唆者・幇助者 人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者
銃刀・火薬不法所持者 銃砲刀剣類所持等取締法に定める銃砲・刀剣類又は火薬類取締法に定める火薬類を不法に所持する者
次の上陸拒否期間を経過していない者
(イ)過去に6麻薬等不法所持者、8銃刀・火薬不法所持者として上陸を拒否された者・・・上陸拒否から1年
(ロ)退去強制(第24条)された者・・・退去した日から5年
(ハ)過去に退去強制(第24条)された者や出国命令により出国したことがある者(リピーター):退去した日から10年
(ニ)出国命令(第55条)により出国した者・・・出国した日から1年
9-2 懲役・禁錮刑判決確定から5年経過していない者 活動資格対象(永住者・日本人の配偶者等などの身分資格は対象外):住居侵す罪、通貨・文書・有価証券・印章偽造、支払い用カード電磁的記録に関する罪、賭博、殺人、傷害罪、逮捕・監禁、略取・誘拐・人身売買、窃盗・強盗、詐欺恐喝、盗品に関する罪等の罪により懲役又は禁錮に処せられた者(執行猶予付含む)
10 特定の退去強制者 暴力主義的破壊活動者・利益公安条項該当者のいずれかに該当して退去強制された者
11 憲法秩序を暴力で破壊しようとした者 日本国憲法、日本政府を暴力で破壊することを企て・主張する又はその主張する団体結成・団体加入している者
12 無政府主義的破壊活動団体構成員等 公務員への暴力、公共施設の破壊、工場事業場の安全を脅かすなどを勧奨する政党・その他団体結成・加入する者
13 暴力主義的破壊活動団体等の宣伝活動に従事しようとする者 11、12の政党・団体目的を達成する為の印刷物・映画・文書図書作成し、頒布・展示する等の宣伝活動
14 その他、法務大臣が日本の利益・公安を害する行為を行うおそれがあると認める相当の理由ある者

※     は、上陸の拒否の特例対象となる上陸拒否事由。(「上陸拒否の特例」参照)linkicon

上陸拒否期間

 上陸拒否事由9は、入管法違反により上陸が禁止される期間を定めています。 この上陸拒否期間が定められた上陸拒否事由以外は、期限の定めのない長期拒否事由となります。 退去強制による上陸拒否期間(9ーロ)は、下表のように法改正により変更されているので、上陸拒否期間の適用については、現実に退去強制された日を基準として、そのときの上陸拒否期間が適用されます。 例えば、平成16年12月2日より前に退去された場合は、一律に5年の上陸禁止期間となります。

公布 施行 退去強制による上陸拒否期間
平成9年(1997) 5月1日 平成9年(1997) 5月11日 一律1年
平成11年(1999) 8月18日 平成12年(2000) 2月18日 一律5年
平成16年(2004)6月2日 平成16年(2004)12月2日 出国命令制度創設による出国者:出国日から1年
退去強制された者:退去日から5年
リピーター:退去日から10年

上陸の拒否の特例 (入管法 第5条の2 上陸の拒否の特例) tolink

 特定の上陸拒否事由に該当している場合であっても、上陸特別許可の手続きを経ずに上陸できるようにした規定です。
法務大臣は、以下に該当する外国人について、特定の上陸拒否事由があっても上陸を拒否しないこととすることができ、上陸を拒否しないこととした場合には「通知書」が交付され、「通知書」に記載された上陸拒否事由に該当することのみによっては上陸を拒否されません。 また、上陸拒否の特例を受けた場合には、上陸特別許可の手続(3審制=入国審査官→特別審理官→法務大臣)は行わず、入国審査官の上陸許可の証印だけで上陸できるようになります。

.在留資格を持って在留している外国人について・・・上陸拒否事由の4、5、7、9、9-2の特定事由に該当している場合であっても、再入国許可を付与している場合

.入国しようとする外国人について・・・在留資格認定証明書を交付された場合又は査証事前協議linkiconを経た査証を受けた場合で、上陸拒否事由の4、5、7、9、9-2の特定事由に該当することとなってから相当期間が経過していることその他特別の理由があると法務大臣が認める場合

上陸の拒否の特例対象となる上陸拒否事由(特定事由)
1年以上の懲役・禁錮等刑に処せられたことのある者 日本又は日本以外の国の法令に違反し、刑の確定があれば該当し、執行猶予期間中・執行猶予経過した者、刑の言い渡し効力が消滅した者含む(政治犯除く) 
麻薬取締法等違反者 日本又は日本以外の国の麻薬・大麻・アヘン・覚醒剤・向精神薬等取締に関する法令に違反して刑に処せられた(刑の確定があれば該当)ことのある者
売春業務従事者 売春又はその周旋・勧誘・その場所提供その他売春に直接に関係がある業務に従事したことのある者(人身取引等により他人の支配下に置かれていた者が当該業務に従事した場合を除く)
次の上陸拒否期間を経過していない者
イ.過去に6麻薬等不法所持者、8銃刀・火薬不法所持者として上陸を拒否された者・・・上陸拒否から1年
ロ.入管法違反により退去強制(第24条)された者・・・初回:退去した日から5年/ハ.リピーター:退去した日から10年
ニ.出国命令(第55条)により出国した者・・・出国した日から1年
9-2 懲役・禁錮刑判決確定から5年経過していない者 活動資格対象:住居侵す罪、通貨・文書・有価証券・印章偽造、支払い用カード電磁的記録に関する罪、賭博、殺人、傷害罪、逮捕・監禁、略取・誘拐・人身売買、窃盗・強盗、詐欺恐喝、盗品に関する罪等の罪により懲役又は禁錮に処せられた者(執行猶予付含む)

上陸特別許可(どのような場合に上陸特別許可されるか)

 「上陸特別許可」は、法務大臣の裁決の特例として認められるもので、法務大臣が、上陸の要件に適合していないと認める場合であっても、上陸を特別に許可すべき事情があると認められるときは、その裁量により上陸を特別に許可するもので、以下に該当するときは「上陸を特別に許可する事ができる。」とされています。

上陸拒否事由が発生した後に再入国許可を受けている場合(出国する以前の日本での在留実績が考慮され上陸を許可される)
※ 既に日本に在留している外国人について、一旦出国し再入国する場合についても、上陸拒否事由が審査されます。
人身取引により他人の支配下に置かれて日本に入った者で、直ぐに本国へ送還するのは、生命身体が危険にさらされる恐れがあるので、被害者を保護する為、一旦上陸を許可される場合がある。
その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき

3については、基本的には人道上及び日本への定着性が考慮されますが、以下の要件を満たしている場合、上陸を許可される場合があります。

その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき
1 日本人、特別永住者、永住者、定住者の配偶者で、婚姻の実体があること。
2 在留資格認定証明書交付時、退去強制後2年経過していること(実子がある場合には、経過期間が緩和される場合がある。)
3 在留資格認定証明書交付時、婚姻後1年以上経過していること。
4 執行猶予付有罪判決を受けた後に強制退去させられた場合は、在留資格認定証明書交付申請時、執行猶予期間を経過していること。 実子がある場合には執行猶予期間を経過していなくても許可される場合があります。

退去強制させられた外国人との婚姻を考えていた場合は、退去させられた外国人は、上陸拒否事由に該当する為、一定期間日本への上陸を認められませんので、相手国へ赴き婚姻を成立させた後、日本で婚姻を成立させ、一定期間経過により、上陸特別許可を求めて在留資格認定証明書交付申請をすることになります。

<参照リンク:在留特別許可 駆け込み婚>

<参照リンク:外国人との婚姻 渉外戸籍ー婚姻>

上陸特別許可の手続(在留資格認定証明書交付申請による上陸特別許可)

 上陸特別許可は法務大臣の裁決の特例として認められるものなので、申請による許可ではありませんが、実際に上陸特別許可を受けようとする場合は、原則として、上陸時に申請を行うのではなく、あらかじめ在留資格認定証明書交付申請により証明書の交付を受け、査証の発給を受けた上で上陸手続をします。

上陸特別許可図解

上陸許可申請を受ける為の在留資格認定証明書交付申請の審査期間は、長期に及びます。 通常の在留資格認定証明書交付申請の2ヶ月~3ヶ月に対して、さらに2ヶ月~3ヶ月程度を要しますので、半年くらいかかることを覚悟しておいた方がよいと思います。

<参照リンク:在留資格認定証明書>

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